打合せの時など客先では、僕は必ず「ホームページ」と言います。
「正しくはWebサイトです」なんて、口が裂けても言いません。
Webサイト制作に関わっている人なら、誰でも一度は「本当はWebサイトなんだけどな」と思ったことがあるはず。
それでも、あえて「ホームページ」と呼ぶ。
理由はシンプル。
打ち合わせで僕が大事にしたいのは、サイトづくりを前に進めることだけ。
そこで「本当はWebサイトという呼び方で…」なんて切り出しても、相手が気にしなくていいことを、ひとつ増やすだけです。
ホームページと言って伝わるなら、最初からそれで話せばいい。
どちらで呼ぶかで完成品の方向性が変わるわけでもないですしね。
ただ「ホームページと呼んでいいですよ」と言うからには、きちんと裏も取っておきたい。
そう思って、一次資料まで徹底的に調べ直しました。
これから書くのは、その結果です。
先に結論だけ言っておきます。
「ホームページ」と「Webサイト」どちらで呼んでも正解です。
使いたい方をつかっていきましょう。
ホームページ・Webサイトの違い

まず、ざっくりした整理から。
URLからアクセスして表示される単体のページのことをWebページと呼びます。
つまりWebページは、1枚のページのこと。
Webサイトは、そのページが集まったひとつのまとまりのこと。
やっかいなのは「ホームページ」です。
Web業界では、「ブラウザを開いて最初に出るページ」や「サイトの入口=トップページ」を指すことが多い。
でも世間では、サイト全体をまるっと「ホームページ」と呼びます。
この”ズレ”が、そもそもの話の入口です。
たいていの解説記事は、ここで「だから正しくはWebサイト、ホームページは誤用」と締めます。
僕も長いこと、そう説明してきました。
でも、その”常識”を、一度きちんと疑ってみることにしたんです。
「ホームページ」は和製英語で誤用なのか
よく目にする説明があります。
「homepage は英語だとトップページ1枚のこと。それを日本人がサイト全体の意味に取り違えて広めた和製英語だ」。
僕も、これを信じていました。
HTMLの学習をはじめて色々な知識を知るうちにこの事を知り、独立当初なんかはモヤッと感を持ちながら過ごしていましたが、次第に気にならなくなり今に至っています。
お客様に説明しながら、心のどこかで「まあ本当はWebサイトなんだけど、HPで通じるしいいか」とくらいの感覚ですね。
「ホームページ」の意味と語源

ところが、その “home page” を古い一次資料まで遡ってみたら、話がまるで違いました。
1992年。Webがまだ生まれたばかりの頃です。
Webを作った人たち(W3C)の文書に、”home page” という言葉が出てきます。
ただしそれは、「サイト全体」でも「トップページ1枚」でもありませんでした。
その人がWeb上に持つ、自分だけの出発点のページのことでした。
当時のWebは、ただ読むだけのものじゃありません。
気になったページへのリンクを自分で書き足して、自分専用の入口ページにしていく。
今でいえば、お気に入りリンクを並べた自作のスタートページに近いものです。
サイト全体でも、会社のトップページでもない。
自分がそこから外のページへ出ていくための、最初の1枚。
それが、いちばん最初の “home page” でした。
そして数年のうちに、”home page” は「自分がネット上に持つ場所」というニュアンスを強めていきます。
象徴的なのが、1995年に公開された、ある個人用ツールの名前です。
作者が自分のオンライン履歴書を管理するために書いたスクリプト群を、彼はそのまま “Personal Home Page Tools” と名づけました(のちのPHP)。
home page は、ただの1枚のページというより「その人のネット上の拠点」を指す言葉になっていたんです。
ここで、この記事の最初の問いに戻ります。
「ホームページ」は、和製英語で、誤用なのか。
まず、「和製英語」から。
これは、はっきり違いました。
home page も homepage も、英語にちゃんと実在する言葉です。
しかも、Webが生まれたばかりの1992年から使われている。
日本人がゼロから作った”それっぽい英語”ではなかったんです。
では、「誤用」のほうはどうか。
ここは、少しだけズレがあります。
英語の home page は、今でも中心は「サイトの中の1ページ」。トップや、最初に開くページのことです。
一方、日本語の「ホームページ」は、「サイト全体」を指すのがふつうになりました。
英語なら website と呼ぶものを、日本語ではホームページと呼んでいる。
たしかに、意味は少し広がっているんです。
でも、これを「間違い」と呼ぶのは、たぶん違います。
さっき見たとおり、英語の home page には、最初から「自分がネット上に持つ場所」という意味あいがありました。
日本語は、その「自分の場所」という意味を、「サイト全体」にまで広げて使っただけ。
言葉は、使われていくうちに意味を広げていくものです。
誰かが取り違えたわけじゃなく、日本での広まり方の中で、自然にそう呼ばれるようになっていった。
なぜ日本では「ホームページ」と呼ぶのか
英語に実在する言葉が日本語で意味を広げたのなら、日本で「ホームページ=サイト全体」が定着したのも、誰かの間違いのせいじゃありません。
インターネットが一般に広がりはじめた90年代半ば、いくつもの流れが同時に効きました。
パソコン雑誌や入門書は、「Webサイト」より耳なじみのいい「ホームページ」を前面に押し出した。
個人がネットに自分のページを持てるサービスも「〜ホームページ」という名前で提供された。
1995年に発売されたWindows 95で、多くの人が一斉にネットにつながった。
そして、決定打のように語られるのが、ホームページ・ビルダーというソフトです。
90年代半ばに登場して、個人や街のお店が、自分の手でサイトを作れるようにした。
日本IBMの研究所で生まれ、その後のシェアは各種調査で6〜7割という圧倒的な普及ぶりでした。
ただ、このソフトが「ホームページ」という言葉を生んだわけではありません。
サイト全体を指す広い使い方は、ソフトが出る前後には、すでに使われはじめていました。
ホームページ・ビルダーは言葉を生んだのではなく、その広まりを一気に後押ししたソフトだったんです。
つまり、日本語の「ホームページ=サイト全体」は、英語の home page がもとから持っていた意味の幅と、日本ならではの広まり方が重なってできたもの。
間違いが広がったのではなく、そう呼ぶ人が自然に増えて、あたりまえになっていっただけなんです。
呼び名は、商品や場所で変わる
ここで、ちょっと面白い見方を。
言葉が世の中に広まるとき、商品や広告の力は、思っているより大きいんです。
特定の商品名が、あまりに広まって、その種類ぜんぶを指すふつうの言葉になる。
そんな例が、身のまわりにいくつもあります。
| 言葉 | もとは | いまの使われ方 |
|---|---|---|
| ホッチキス | もとはE.H.ホッチキス社の社名(商標)が由来とされる (諸説あり) | いまの使われ方「ステープラー」全般を指す言葉に |
| 宅急便 | もとはヤマト運輸の商標 | いまの使われ方「宅配便」全般(他社の便も含めて)を指して |
| シーチキン | もとははごろもフーズの登録商標 | いまの使われ方「ツナ缶」全般を指して |
| サランラップ | もとは旭化成の登録商標 | いまの使われ方「食品用ラップ」全般を指して |
| バンドエイド | もとはジョンソン・エンド・ジョンソンの商標 | いまの使われ方「救急絆創膏」全般を指して |

「ホームページ」も、近いところがあります。
ホームページ・ビルダーという商品や、「ホームページを作りませんか」という制作会社の広告。そういうものにくり返し触れるうちに、「ホームページ」という言葉も、暮らしの中にすっかりなじんでいきました。
(ホッチキスのように商品名そのものが言葉になったのとは少しタイプが違います。ホームページはもともと英語にある言葉で、その意味が広がったほう。それでも、商品や広告が言葉を広めていく流れはよく似ています。)
そして、いちばん面白いのがバンドエイドです。
これ、実は地域によって呼び名がまるで違うんです。
リバテープ製薬が公開している「呼び方マップ」によると…
- 関東や近畿では「バンドエイド」
- 九州や沖縄では「リバテープ」
- 東北や四国では「カットバン」
- 北海道では「サビオ」
- 富山だけは「キズバン」
- 新潟や長野のあたりでは、そのまま「ばんそうこう」
と呼ぶそうです。
同じ小さな絆創膏なのに、住む場所によって”あたりまえの名前”がこんなに違う。
それでも、どれかが間違いなんてことはありません。
呼び名って、時代や場所や相手によって、けっこう自由に姿を変えるものなんですね。
トップページとホームページの違い
ついでに、もう一つ。
僕には、思い込んでいたことがあります。
「トップページという言葉は、ホームページより後にできたんだろう」と、なんとなく思っていました。
ホームページがサイト全体を指すようになって、入口の1枚を呼ぶ言葉が”空いた”。
だから後から、トップページという言葉が用意された。
そんな順番を、勝手に想像していたんです。
でも、調べてみると、そう単純でもありませんでした。
「トップページ」と「ホームページ」は、どちらが先とはっきり線を引けるものではなく、わりと早い時期から入り混じって使われていたようです。
ここは、確かなことを言い切れる材料が、僕には見つけられませんでした。
だから、深追いはしません。
ただ、「トップページは後発」という思い込みも、そんなに確かなものじゃなかった。
呼び名の先も後も、その程度に曖昧なものなんです。
ブラウザの家アイコンはなぜ家の形なのか
ここで、あなたのブラウザで今すぐ確かめられるものがあります。
多くのサイトで、「最初のページに戻る」ボタンが、家の形のアイコンになっていますよね。
なぜ、家なのか。
これは、「home=拠点、帰ってくる場所」という感覚が、Webの初期に強く生きていた名残なんです。
いちばん最初の “home page” は、その人がWebへ出ていくための、自分の拠点のような1枚でした。
その「家=戻ってくる場所」という発想が、アイコンの形になって残った。
これは、「ホームページ=トップページだった」ことの証拠ではありません。
むしろ、当時の感覚がそのまま形になって残っている、名残りのようなものです。
言葉の意味は時代とともに動くけれど、こういう意匠には、昔の感覚がひっそり残る。
家アイコンは、その一つなんです。
結局、ホームページとWebサイトどちらで呼ぶべきか
では、結局どう呼べばいいのか。
ここまで見てきたとおり、”home page” はもともと英語にある言葉で、その意味が日本語で広がっただけ。
日本の「ホームページ=サイト全体」も、間違いが広がったわけではありませんでした。
つまり、どの立場も、間違ってはいないんです。
業界の人が「Webサイト」と呼ぶのも正しい。
お客様が「ホームページ」と呼ぶのも正しい。
入口の1枚を「トップ」と呼んでも「ホーム」と呼んでも、間違いじゃない。
呼び名は、その場で相手に通じれば、それでいい。
だから、僕の結論はこうです。
現在の日本では、ホームページと呼んで問題ありません。
相手に伝わる言葉を選ぶ。
それより大事な”正しさ”は、たぶんないんです。
ひとつだけ、実用的な使い分けを添えておきます。
相手が英語圏の人なら、website を使ったほうが確実です。
英語の homepage は、今でも「トップページ1枚」の意味に寄っている。
だから「サイト全体」を指したいときは、website のほうが伝わる。
英語で情報を検索するときも同じで、website で探したほうが目的にたどり着きやすい。
面白いのは、AIの場合です。
日本語で「ホームページを作って」と頼めば、ちゃんと「サイトを作る」意味で受け取ってくれる。
僕がやり取りしてきた限りでも、「Webサイト」と書いても「ホームページ」と書いても、どちらもサイト全体のこととして話が通じました。
日本語のこの使い方を、AIもちゃんと分かっているんですね。
ただし、英語で homepage と頼むと、今度は1枚のページの話に寄りがち。
やっぱり、英語のときは website です。
そして僕自身は、明日もお客様の前で、迷わず「ホームページ」と言います。
日本語の現場では、それがいちばん伝わる言葉だから。
これから、自分のメディアを持つ人へ
最後に、これから自分でサイトやメディアを持とうとしている方へ、一つだけ。
今回、僕は「ホームページと呼んでいい」と言い切るために、古い一次資料まで遡って確かめました。
手間はかかるので、正直「ちょっと面倒だなぁ」という感覚はあります(笑)
でも、この「一度、自分で確かめてみる」という手間こそ、これから何かを発信していく場合、大切な土台の1つになると思っています。
ネットには、それらしい説明があふれています。
「これは誤用」「本当はこうだ」という断定も、たくさん流れてくる。
その多くは、きっと親切で書かれたものです。
それでも、鵜呑みにする前に、一次資料まで一度だけ戻ってみる。
すると、案外「どっちでもよかった」と分かることもある。
辿れるところまでで良いと思います。
論文を書いて発表するってわけでもないですしね。
呼び名にこだわるより、伝わることを大事にする。
そして、大事なことは自分で一度確かめてみる姿勢。
その姿勢さえあれば、あなたの発信はきっと信頼されるものになっていきます。
同じ「ホームページ」と「Webサイト」の話を、もっと気楽な読み物として note にも書きました。
日常でどう使い分けるか、みたいな軽い話です。よかったら、のぞいてみてください。
この記事で参考にした資料
- W3C『World-Wide Web: The Information Universe』(Berners-Lee ほか, 1992)
home page が「個人がWebに持つ出発点の1枚」だったこと
https://www.w3.org/History/1992/ENRAP/Article_9202.pdf - Merriam-Webster「home page」(初出1992年)
https://www.merriam-webster.com/dictionary/home%20page - Merriam-Webster「web page」(初出1993年)
home page(1992年)より後にできた言葉
https://www.merriam-webster.com/dictionary/web%20page - PHP: History of PHP — 1995年に “Personal Home Page Tools” として公開されたこと
https://www.php.net/manual/en/history.php.php - Wikipedia「ホームページ・ビルダー」
日本IBMの研究所発・シェア6〜7割・発売年の揺れ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ホームページ・ビルダー - リバテープ製薬「ばんそうこうの呼び方マップ」
絆創膏の地域別の呼び名(バンドエイド/カットバン/リバテープ/サビオ/キズバン)の分布
https://libatape.jp/map/ - シーチキン(Wikipedia)
「シーチキン」がはごろもフーズの登録商標で、一般名は「ツナ」であること
https://ja.wikipedia.org/wiki/シーチキン